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山形地方裁判所 平成7年(わ)33号 判決 1995年6月30日

本店所在地

山形県東村山郡山辺町大字根際二四九番地

有限会社

山形ピッグファーム

(代表者代表取締役 阿部秀俊)

本籍・住居

山形県東村山郡山辺町大字根際二四九番地

会社役員

阿部秀俊

昭和二〇年一月一日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官大塲亮太郎、弁護人長岡壽一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社有限会社山形ピッグファームを罰金一五〇〇万円に、被告人阿部秀俊を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人阿部秀俊に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社有限会社山形ピックファームは、山形県東村山郡山辺町大字根際二四九番地に本店を置き、養豚業を目的とする資本金一〇〇〇万円の有限会社であり、被告人阿部秀俊は、被告会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人阿部は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、種豚・肉豚等の売上除外、飼料添加薬品等の架空仕入の計上、豚の棚卸除外などの方法により、所得を秘匿した上

第一  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六六八〇万七四九〇円であったにもかかわらず、平成三年二月二八日、山形市大手町一番二三号所轄山形税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が八二万五四七八円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五八三万九二〇〇円を免れ

第二  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三四四三万六三五〇円であったにもかかわらず、平成四年二月二八日、前記山形税務署において、同税務署長に対し、所得金額がなく、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一二一四万九三〇〇円を免れ

第三  平成四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八四三八万七一三二円であったにもかかわらず、平成五年二月二四日、前記山形税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二六七万七一一円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三〇八七万九四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告会社有限会社山形ピックファーム代表者兼被告人阿部秀俊の当公判廷における供述

一  被告会社の検察官(四通)に対する各供述調書

一  菊池昭彦、秋場正弘、三部美紀子(二通)及び阿部和枝の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上除外額等調査書、簿外売上値引額調査書、棚卸除外額(豚)等調査書、簿外賞与等調査書、給料手当調査書、簿外運賃調査書、租税公課調査書、簿外支払手数料調査書、薬品費除外額等調査書、簿外借入金等調査書、雑収入除外額調査書、未納事業税等調査書、租税公課(源泉徴収税額)等調査書、役員賞与損金不算入額調査書、みなす犯則損調査書、繰越欠損金当期控除額調査書及び申告欠損金調査書

一  検察事務官作成の報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

一  押収にかかる、平成二年一月一日、同年一二月三一日事業年度分の確定申告書(平成七年押第一〇号の一)、平成三年一月一日、同年一二月三一日事業年度分の確定申告書(同号の二)、平成四年一月一日、同年一二月三一日事業年度分の確定申告書(同号の三)、平成二年一月一日、同年一二月三一日事業年度分修正申告書(同号の四)、平成三年一月一日、同年一二月三一日事業年度分の修正申告書(同号の五)及び平成四年一月一日、同年一二月三一日事業年度分の修正申告書(同号の六)

(法令の適用)

一  被告会社有限会社山形ピッグファーム

罰条 法人税法一六四条一項、一五九条

併合罪の加重 平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段、四八条二項

宣告刑 罰金一五〇〇万円

二  被告人阿部秀俊

罰条 法人税法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑

併合罪の加重 平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

宣告刑 懲役一年

刑の執行猶予 平成七年法律第九一号による改正前の刑法二五条一項一号

(量刑の理由)

被告会社有限会社山形ピッグファームは、養豚業を目的とするもの、被告人阿部秀俊は、被告会社代表取締役として同会社の業務全般を統括する者であるところ、納税を免れて会社の備蓄資金を形成するなどの目的のため、判示のとおり三納税年度にわたり、所得額において合計一億八五六三万〇九七二円を秘匿し、税額において合計六八八六万七九〇〇円をほ脱したもので、ほ脱の回数も多く、秘匿所得額、ほ脱税額は多額である上、ほ脱率は一〇〇パーセントと極めて高い。また、その手段、方法は、多額の収入を得ながら、商品販売の売上を除外し、例年事業年度末が近くなるや、薬品購入につき仕入れ会社らの担当者に依頼して、翌期に仕入れるべき薬品を当期に仕入れたことにして、架空の領収証を徴収して薬品仕入れを計上することにより経費の過大計上を図り、期末製品棚卸を除外するなどの方法で利益の圧縮を図ったものであって、その犯行態様は計画的であって悪質であり、その刑事責任は重いといわざるを得ない。とりわけ、被告人阿部秀俊は、被告会社の脱税を自ら企図し、部下従業員に指示してこれを敢行したもので、本件脱税において果たした役割は重大であり、畜産業における厳しい現状を考慮しても、その責任は重いといわねばならない。

しかし、当然のこととはいえ、本件発覚後においては、右脱税額に見合う各修正申告をなし、これに伴う付帯税を含め、これらを完納していること、修正申告に伴う地方税の納付においても、県民税、事業税、町民税等をも完納していること、被告人阿部秀俊はとりたてるほどの前科もなく、犯行を反省していること等の事情もあるので、その余の諸事情をも総合斟酌して主文掲記のとおり、被告会社有限会社山形ピックファームについては罰金刑に処し、被告人阿部秀俊については懲役刑に処するとともに特にその刑の執行を猶予するのが相当と認めるものである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 井野場明子)

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